概要
Amazon Web Services® (AWS) を使用している組織がオープンソースのエンタープライズ Linux® ディストリビューションを実行すると、さまざまな種類のインフラストラクチャに容易に対応できるようになり、また、開発チームと運用チームがあらゆる環境で共にイノベーションを生み出せるようになります。これにより、市場投入時間の短縮、複雑さの軽減、オンデマンドのスケーラビリティ、コスト削減などのメリットを享受できます。
Linux と AWS を組み合わせて実行すると、組織はクラウド環境に移行し、ハイブリッドクラウド管理を単純化する自由と柔軟性を獲得でき、アプリケーションを短時間で大規模に構築、デプロイ、配信するためのツールも得ることができます。
Linux と AWS の連携方法
Linux と AWS がなぜ極めて強力な組み合わせなのかに注目する前に、これらのテクノロジーとそのメリットについて理解することが重要です。
Linux とオープンソース・コミュニティは、クラウド・コンピューティングの構築とその普及に大きな役割を果たしました。以来、Linux はクラウド・コンピューティングとクラウドサービスにとって最適なオペレーティングシステムであり続けています。
Red Hat® Enterprise Linux® は、数百のクラウドと数千のハードウェアベンダーおよびソフトウェアベンダーで認定された、世界有数のエンタープライズ向け Linux プラットフォームです。Red Hat Enterprise Linux は、HPC (高性能計算) とハイブリッドクラウドのユースケースにおける安定の選択肢です。長期サポートとテクニカルユーザーガイドを提供し、Microsoft Azure® や AWS などの多くの業界パートナーとの互換性を備えています。
AWS は最初の世界的なクラウドプロバイダーであり、現在でも市場最大手です1。世界中に分散した AWS 独自のデータセンター・ネットワークを通じて、ワークロードとアプリケーションのスケーリングに必要なコンピューティング能力に対してセキュリティ重視のバーチャルアクセスをオンデマンドで行うことができ、今日の市場の課題に対応する上で必要なアジリティがもたらされます。
AWS は、クラウド・マーケットプレイスを介したクラウド・コンピューティングの提供において豊富な経験を持っていますが、Linux オペレーティングシステム (最新バージョンは Amazon Linux 2) も提供しています。AWS クラウドでアプリケーションを実行する OS として選択すると、一定期間無料で利用できる場合があります。Amazon Linux 2 は、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスタイプを起動できる AWS が作成する、事前にパッケージ化されたイメージである Amazon マシンイメージ (AMI) として利用できます。
AWS でエンタープライズ Linux を使用する組織は、オンプレミスで使用する場合と同じメリットを享受でき、クラウドシステムとオンプレミスシステムをより簡単に統合できます。エンタープライズ Linux ディストリビューションが AWS ユーザーに提供するものを以下に示します。
- 柔軟性
- オープンソース・イノベーション
- インフラストラクチャ全体の一貫性 (これによってクラウドへの移行の複雑さを軽減できる)
- コンテナの可搬性
- 大規模な拡張性
- 継続的なセキュリティ
エンタープライズ Linux で標準化することにより、ワークロードを AWS に移行する組織は、オンプレミスとクラウドのフットプリント間で共有できる既存のプロセス、ビジネスプラクティス、知識、およびスキルを利用することができます。
先進的な IT 環境で AWS のメリットを最大限に活用するには、適切な Linux ディストリビューションを選択することが重要です。ディストリビューションが異なれば、さまざまなサブスクリプションモデル、運用コスト、サポートモデル、既存のインフラストラクチャやサードパーティ製テクノロジーとの統合など、享受できるメリットも異なります。
AWS で Red Hat Enterprise Linux を実行する理由
競合他社、顧客のニーズ、急速な市場の変化に対応するために、効率的な拡張と革新を目指すエンタープライズ組織は、クラウドへの移行にあたり多くのことを考慮する必要があります。柔軟性と拡張性を得ると同時に、セキュリティ、管理性、信頼性の問題にも対処する必要があります。ここで、Linux ディストリビューションの選択が大きな違いを生みます。
Red Hat は、25 年以上にわたる経験に基づく Linux の専門知識と、Red Hat Enterprise Linux とシームレスに統合して連携するツール、ソリューション、パートナーからなる広範なポートフォリオを提供します。Red Hat Enterprise Linux と AWS を組み合わせることで、両方の製品の長所を組み合わせることができます。先進的でアジャイルな業務運用に適した、インテリジェントで安定性の高いセキュリティ重視の OS 基盤を使用できます。また、ワークロードとアプリケーション用に、グローバルに利用でき、セキュリティに重点を置いた、オンデマンドのサイズ変更可能なクラウド・コンピューティング能力も獲得できます。
Red Hat Enterprise Linux は AWS で認定されており、ユーザーのインフラストラクチャでの一貫性が維持されます。Red Hat Enterprise Linux を使用する場所が AWS かオンプレミスかに関係なく、組織のアプリケーションとワークロードをすべて 1 つのツールで管理できます。
Red Hat はオープンソースにルーツを持ち、コンテナ化アプリケーションのデプロイ、スケーリング、管理を自動化するオープンソースシステムである Kubernetes の主要コントリビューターの 1 つです。Red Hat Enterprise Linux は Kubernetes 戦略の基盤であり、アプリケーションのモビリティ、実証済みのエンタープライズ・セキュリティ、エンタープライズ規模でのサポートを提供します。
コンテナは Linux テクノロジーです。Red Hat は AWS や他のクラウドプロバイダーでそのソリューションを提供し、実行中のワークロードやアプリケーションに関係なく、統合を包括的に行い、サポートと一貫したエクスペリエンスを利用できるようにします。Red Hat Enterprise Linux サブスクリプションにはオープンソースのコンテナツールである Podman、Buildah、Skopeo が含まれており、開発者はコンテナを簡単に起動し、デプロイを管理し、クラウドでの新規アプリケーションの開発を加速できます。Red Hat Universal Base Image (UBI) は、多数の言語ランタイムを使用するためのビルド済みイメージを開発者に提供します。多くの場合、イメージを使用するだけで、ビルド中のアプリケーションの作業を開始できます。
Red Hat Enterprise Linux on AWS を実行するメリット
管理の単純化: Red Hat Enterprise Linux を選択すると、アプリケーションのクラウドへの移行に伴う複雑さと管理上の課題を最小限に抑えることができます。これは、オープン性と一貫性、オペレーティングシステムの単純化、サードパーティのハードウェア、ソフトウェア、およびツールプロバイダー全体の広範な統合によって実現されます。
Red Hat と AWS の高度なツールは、プロビジョニング、スケーリング、ポリシーの適用、廃止まで、アプリケーションの管理を自動化し設定します。Red Hat Enterprise Linux Web コンソールは、Linux 初心者にも使いやすいユーザー・インタフェースによって時間を節約し、日々のシステム管理を単純化します。また、自動化されたシステムロールにより、セキュリティグループおよびワークフローの最適化と、最小限のリソースによる長期間の維持が容易になります。Red Hat Package Manager (RPM) は、ユーザーが Linux システムの特定のリポジトリでソフトウェアパッケージとアクセス許可をインストール、更新、削除、追跡するのに役立ちます。
セキュリティ機能:Red Hat Enterprise Linux と AWS は、継続的なセキュリティに対する 2 つのプロセスアプローチを通じて一貫性を検証します。まず、オペレーティングシステムが AWS Marketplace に記載されるためには、検証プロセスに合格する必要があります。次に、人工知能ツールである AWS Inspector と Red Hat Insights (Red Hat Enterprise Linux に含まれる) がエンタープライズ環境を常に監視します。また、Red Hat は、Linux インスタンスを中断することなく脆弱性に対応するための Linux カーネルライブパッチも提供し、利用可能になり次第 Red Hat Enterprise Linux にセキュリティアップデートを適用します。これらのアップデートは、信頼性を確保し、ユーザーデータを保護し、セキュリティの脆弱性が発見された場合にはそれを修正するように設計されています。
支払いオプション: Red Hat は AWS と緊密に連携しており、便利な購入方法と価格設定を提供しています。組織は、AWS での確約利用料を Red Hat Enterprise Linux の購入に充てることができます。これにより、AWS Marketplace での購入時に、AWS との確約利用契約に記載されている割引 (Enterprise Discount Program と呼ばれる) を利用できます。
あるいは、Red Hat は組織と協力して、組織のニーズに合わせた支払いプランをカスタマイズすることもできます。また、従量課金制のクラウドオプションの利用が最適な組織もあるでしょう。
柔軟性:Red Hat Enterprise Linux は、クラウド、オンプレミス、エッジなど、さまざまなフットプリントで一貫したパフォーマンスとセキュリティを実現するように設計されています。現在の先進的な IT 環境はハイブリッドであり、ワークロードはパフォーマンス、規模、およびコンプライアンスのニーズを満たす場所にデプロイされます。Red Hat Enterprise Linux は、AWS で最適なパフォーマンスを発揮するように設計されていますが、さらに大きなパートナーエコシステムの一部でもあります。SAP 環境は Red Hat Enterprise Linux での実行が認定されていますが、Red Hat Enterprise Linux はその認定を受けているわずか 2 つの Linux ディストリビューションの 1 つです。この広範なエコシステムにより、ベンダーロックインからも解放されます。
AWS で稼働する Red Hat ソリューションは、パフォーマンスが最適化されるように共同開発されています。また、Red Hat Enterprise Linux は、Red Hat ユーザーが従来のオンプレミス・デプロイメントに期待するのと同じレベルのセキュリティ、スケーラビリティ、管理性、信頼性を AWS ユーザーに提供できるように設計されています。